Koe to Ehon
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ウクライナ絵本を読む。(おすすめウクライナ絵本4選)

2022年2月24日に、ロシアがウクライナに侵攻してから、
44日が経ちました。

グランディ国連難民高等弁務官が3月20日にツイッターに発表した内容では
ウクライナの国内外の避難民は1000万人を超えたとのこと。

家族や友人が亡くなったり、負傷したり、
大切な人と離れ離れになっている方々のことを思うとき、
ここにある平和は当たり前ではないことに気付かされます。

もう20年近く前になりますが、
大学生の時、伝統楽器バンドゥーラを演奏する
ウクライナ人女性の演奏会をお手伝いしたことがあります。
チェルノブイリ原発事故で被曝している彼女は、
その悲しみも、住んでいる場所の美しさも、
音楽で伝えたいと言っていました。

彼女の音楽が、今までの私のウクライナに対するイメージ。
強くて美しくて、どこか儚い。

今日はその、古い思い出を胸に、
ウクライナに気持ちを寄せて、
絵本を紹介したいと思います。

1.ウクライナ民話 てぶくろ

ウクライナ民話の中で

いちばん有名なお話。

様々な出版社から

色々な作家さんの絵で出版されていますが、

1番のおすすめはこちらです。


てぶくろ
エウゲーニー・M・ラチョフ え
うちだ りさこ やく
福音館書店
(読んであげるなら 3才から
自分で読むなら 小学校低学年から)

絵を描いた、

エウゲー二・M・ラチョフさんは

シベリア(ロシア)生まれ。

そして、ウクライナにある

キエフ美術学校で学ばれた方です。

おはなしの中で、

寒い日に、てぶくろの中に入れてと

次々、動物がやってくる様子や、

大きい動物がやってきても

てぶくろがぎゅうぎゅうになっても

みんなで身を寄せ合う姿を見て、

ウクライナの方々がシェルターで身を寄せ合い

インタビューを受けているニュースを思い出しました。

どうして大切な家族や友人と過ごす

大切な時間や場所を

奪うことができたのだろう、

と胸が苦しくなります。

子どもたちには、

このお話を素直に楽しんでほしいです。

だけど大人は、それぞれの経験から得た尺度で

この絵本を読んで欲しいと思います。

繰り返しが心地よく、

日本にはない独特な美しさを持つ絵が魅力の絵本です。

アマゾンの情報「THE MITTEN」(英語絵本・CD付)

アマゾンの情報「てぶくろ」(翻訳絵本)

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2.ウクライナのむかしばなし 空とぶ船とゆかいななかま


ウクライナのむかしばなし
空とぶ船とゆかいななかま
バレリー・ゴルバチョフ 再話・絵
こだま ともこ 訳
光村教育図書
(4、5歳頃から)

7歳の娘が一人で黙読した後

「おもしろーい!」

と 声を上げていた絵本です。

昔ある王様が

「空とぶ船に乗って、お城まで来たものを王女と結婚させる」

というおふれを出しました。

そのおふれを聞いた「世界一のまぬけ」が

空とぶ船を探しに出かける、という話です。

注目したいのは結末。

主人公である

「世界一のまぬけ」と呼ばれた若者は、

一風変わったゆかいな仲間

(きき耳・ひとっとび・千キロおみとおし・たらふく・
ひとくちごっくり・たきぎかつぎ・わらたばだんな の7人)

と、空とぶ船に乗って城へ行った後

王様からの新たな難題に立ち向かうのですが

諸々を解決して「ちゃんちゃん」と終わるのだけではなく

物語は、こう締めくくってあるのです。

「きぬのふくに きがえた 世界一のまぬけは、
たいそう りっぱな わかものに なりました。

そればかりか ゆかいな なかまから
いろいろなことをおしえてもらって、
とても かしこくなっていたのです。」

この文章が私はとても好きです。

出会いは人を成長させる。

この絵本を通して

改めて教えてもらったことです。

ぜひ多くの方に読んでもらいたいと思います。

ちなみに、再話と絵を担当した

バレリーさんは、

1944年ウクライナのキエフに生まれ、

児童書の挿絵画家として活躍した方で、

1991年ソビエト崩壊をきっかけに

アメリカに移住されました。

以後、絵本作家として人気を得ていて

今も多くの絵本を手がけておられます。

(私も実は1冊持っていますので、最後におまけ紹介しますね。)

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3.ウクライナの昔話 わらのうし


ウクライナの昔話 わらのうし
内田莉莎子 文
ワレンチン・ゴルディチューク 絵
福音館書店
(読んであげるなら3才から
じぶんで読むなら 小学校初級向き)

ワレンチン・ゴルディチューク

という方が絵を担当されています。

ワレンチン・ゴルディチュークさんは、

ウクライナのキエフで生まれ、

国立キエフ芸術大学で学んだ後、

モスクワとキエフの出版社で

数々の挿絵を手がけた方です。

日本での絵本の仕事は、

今回ご紹介した絵本が

初めてのものとのこと。
(1998年発行)

 

さて、この絵本についてですが

昔話らしい昔話、というのが第一印象です。

あるところに貧乏なおじいさんとおばあさんがいて

おじいさんはタールを作り、
おばあさんは糸を紡いで、

やっとのことで暮らしていたのですが

ある日おばあさんはおじいさんに、
わらでうしを作ってくれと頼みます。

横腹にタールを塗り、わらのうしは完成。

翌朝、おばあさんはわらのうしを連れて
丘にのぼります。

おばあさんが丘で居眠りをしていると

くまが現れ、わらのうしにタールをよこせ、
と言ってきます。

わらのうしの横っ腹タールを剥ぎ取ろうとすると・・・

くっついて離れられなくなりました。

こんな感じで、翌日からも
おおかみやきつねがやってきて
タールにくっついてはおじいさんに捕まえられてしまうのですが

動物は、逃がしてもらう代わりに
おじいさんとおばあさんに貢ぎ物を持ってくるのです。

こうしておじいさんとおばあさんは
幸せに暮らしました、というお話です。

昔話らしい、展開の繰り返しと、

小気味のいい物語で

読んで損はない1冊です。

(現在アマゾンや楽天ブックスには在庫がないようです。
図書館や書店でのお取り寄せが良いかと思います。)

4.ウクライナの昔話 セルコ


セルコ
内田莉莎子 文
ワレンチン・ゴルディチューク 絵
福音館書店

セルコという犬は、
お百姓の家に飼われていましたが、
としをとったことで追い出されてしまいました。

行くあてもなく野原をうろついていたところ
おおかみに出会い、事情を話します。

するとおおかみがある提案をしてくれました。
「むぎの刈り入れの際、あかんぼをさらうから
あんたはおれを追っかけて、あかんぼを取り戻すんだ」

おおかみがあかんぼをさらい、おかみさんが悲鳴をあげたところで
セルコがあかんぼを取り返し、めでたしめでたし。
セルコはご馳走を用意してもらい、百姓夫婦から謝罪を受けます。

家に戻ることができたセルコは、おおかみに感謝して、
ある日恩返しの計画を立てました。

絵を描いたワレンチン・ゴルディチュークさんは
「わらのうし」の絵を描いた作家さん。

絵本は「わらのうし」発行から約3年後の
2001年に発行されています。

表情や顔の描き方こそ、あまり日本人には
馴染みのない雰囲気がありますが
(シワが多く描かれていて、目が独特です。)

お百姓さんの暮らしは、絵を見る限り、
昔の日本のお百姓さんとよく似ているなと感じました。

例えば、動物がいる丸太小屋や犬小屋、
むぎ畑の脇に生えている松の木らしい木等、
どこか日本の心象風景を思わせるような絵です。

違うと感じるのは、着ている洋服や
ずらっと並んだごちそうの種類。
(スイカだけは同じ♪)

ウクライナの民族衣装でしょうか。
女性の着ている服の草花模様はとっても可愛いし、
男性が腰に締めている帯締めみたいなものもかっこいい。

大判絵本なので、じっくり絵を眺めながら
昔話から感じ取れるウクライナの文化を
堪能していただきたいと思います。

 (こちらも現在、アマゾンや楽天ブックスには在庫がないようです。
図書館や書店でのお取り寄せが良いかと思います。)

番外編:我が家愛読しているバレリーゴルバチョフの絵本


ゆうびんやさんおねがいね
サンドラ・ホーニング 文
バレリー・ゴルバチョフ 絵
なかがわちひろ 訳
徳間書

コブタくんは遠くに住んでいるおばあちゃんのお誕生日に、
おばあちゃんが喜ぶものを送ろうと考えます。

「おばあちゃんは、ぼくが ぎゅって すると よろこぶよ。
ぼく、おもいっきり ぎゅうーって してあげたいな」

そこでコブタくんはおかあさんと ふうとうをもって
ゆうびんきょくへでかけました。

コブタくんは、おばあちゃんに
「ぎゅう〜」と抱き締める、
ハグをプレゼントしたいと考え、

郵便窓口のイヌさんに相談したところ
なんと、
「やってみましょう」のお返事が!

そこでコブタくんはイヌさんにぎゅっ!

今後は、イヌさんが
中にいた、手紙の仕分け係:ヤギさんにぎゅっ!

こうして時には照れながら、時には笑いながら、

郵便トラックの運転手や飛行場へ向かうトラックの運転手、
飛行機の機長、郵便局の局長等、
さまざまな動物たちの手を借りて、
おばあちゃんに孫からの特別なプレゼントが届くのです。

オチもとっても可愛くて、
読み終えると心があったかくなってニコニコしちゃう。

そんな1冊です。

ちなみに原書は英語なので、
英語絵本もありますよ♪

こえとえほん湘南 日英絵本おはなしの部屋では
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